「ゴールドラッシュ・ユニバーシティー」なる物がもし存在していたら、トップクラスで入学できたんじゃないかと言うくらい、この「原宿ゴールドラッシュ」だけは何度も何度も読み返した。
よく言う、擦り切れるくらい。(実際擦り切れた)
原宿を若者の街に変えた、主人公の「ヤマちゃん」て、どんな人なんだろう。。。
読むほどにその人への興味と憧れが強くなっていった。
お金が貯まりピンクドラゴンに向かうと、たまに通りからビルを見上げて、何か物思いにふけっている大人の人がいました。
何度も見かけた光景。
一見無口そうな、
でもピンクドラゴンビルの放つ分厚いオーラまでをも包み込みそうな異様な空気感でビルを見上げる男性。
その時は分からなかったが、後にその人があの原宿ゴールドラッシュの主人公、その人だと知った時には、「やっぱり」と思いました。
思いは褪せる事無く、初めて原宿に行ってから10年後、憧れのクリームソーダへ入社する事が出来ました。
末端のスタッフにあまり係わることのない社長でしたが、入社初日、なぜか僕にニックネームを付けて可愛がってくれました。
「怪人20面相」
「キングコング」
「シンガポールナイト」
「ガレッヂパラダイス東京」
「クリームソーダ」
「ピンクドラゴン」
数々の胸を躍らすロマンチックなネーミングをお店に付けてきたその社長が僕につけた名前は
「さすけ」
お店で仕事をしている時に、背の小さい僕は商品棚に隠れてしまい
「姿を消すからお前は忍者だ」と、、、
「何で俺だけズッコケた名前なの!?」
と、10年間憧れ続けたピンクドラゴンに入社し、これから頑張るぞ!と意気込んでるさ中に付けられた、ロマンチックとは程遠いニックネームに最初は戸惑い落ち込んだが、
お陰で社長には可愛がってもらい、この業界でも「さすけ」で多くの方々に可愛がってもらっている。
全ては社長のお陰。
今は地元熊谷に、社長から公式に「ガレージパラダイス」の名前を与えられ、お店をやらせて貰っている。
全国に「ガレージパラダイス」と言う名のSHOPや飲食店など数々あるが、かぶっているつもりはまったく無い。
オフィシャルはウチだけだから。
お店を始めて1年目、少しパンクっぽい女性客が
「マックショウのCD置いてますか?」
とお店にやってきた。
「マック賞?」
恥ずかしながら、その頃マックショウをまだ知らなかった僕。
そのお客さんに詳しい話を聞き、興味を持った僕は覚えたてのYOUTUBEでマックショウを検索。
「KAIJIN 20 MENSO」 The MACKSHOW ・・・
怪人20面相? 社長がつけたロックンロール・スナックの名前・・・
心臓の脈が高鳴るのが分かる・・・・
なにかとんでもない物を見てしまうような予感が・・・・
モノクロームの画面に、革ジャンに革パン、リーゼント、キャッツアイの3人の姿が映し出される。
キャロル? いや、3ピースだ。
革ずくめの古いロックンロールスタイルだが、少しもダサさを感じない。
むしろ洗練されたカッコ良さを感じる。。。。
すると、
ヂャヂャヂャ ヂャンヂャンヂャン ヂャヂャ~ン♪
ぶっ飛んだ!
怪人20面相!
ハッキリ言って、ぶっ飛んだ。 これがよく言う、ぶっ飛ぶってヤツか。
音楽を聴いてぶっ飛んだのは、いい年こいて、初めてだった。
いや、一度だけあった。
「みんなが崇拝するエルビスを、俺も好きなフリをしないと置いていかれてしまう」
と恐れ、何枚か買ったレコード。
でも何かが違う。
「これ、ロカビリーなの?」
っと疑問に思いつつも、エルビスの事を好きなフリ。
しかし、高1の時に中古で買った海賊版のCD。
荒っぽくもダイナミックでダイレクトな音で編集されたSUN時代の曲~ビクター初期の音源が網羅された海賊版を聴いた時、、、
あの時はぶっ飛んだ。
全開バリバリのロカビリー。
「これが本物のエルビスなんだ!」
ドキドキした。
CDを聞きながらガマン汁でパンツが染みそう。
体の中に今までに無い感覚が沸いてきた。
その時の感覚が、再び蘇る。
30を過ぎたいいおっさんになりかかろうとしている男が
YOUTUBEにかじりつきながら、再びガマン汁でパンツが塗れそうだ。
エルビスやエディーやジーンにバディーは今は過去の人だが、
マックショウはリアルタイムだ。 今を生きるロックンロールのヒーローだ。
何かとんでもない事が始まりそうな予感。
それからと言うもの、マックショウ漬けの日々。
来る客来るく客に、「ねーねー、マックショウって知ってる?」
と、「BEAT THE MACKSHOW」と「怪人20面相」のCDを聞かせまくり。
来る客来る客、「マック症」のウィルスが蔓延し、患者が増えてゆく。
直ぐにそのウィルスは全国に広がった。
あの時に感じたとんでもない事とは、
ロックンロール1本で全国の不良達をトリコにし、
もやはこの国の一つのカウンターカルチャーとして実現してしまったと思う。
そのマックショウが、社長の命日である3月24日、ピンクドラゴンビル内でロックンロールをぶちかました。
社長の追悼のロックンロール・パーティー。
古いマックショウの曲を中心に最高の選曲!!
沸きあがる会場。
背の小さい僕はほとんどメンバーの姿が見えない。 さすけだから。。。
でもそんなの関係ない。
あの空間にマックショウのシャウトが響き渡っているだけで夢の様な時間だった。
途中キャロルもカバーした「メンフィス・テネシー」などは、永ちゃんとも仲の良かった社長への弔いか。
みんな大好き「恋のチューインガム」
いつも以上に心に突き刺さる、「クリームソーダの甘いグリース」のフレーズ。
涙が出そうだ。。。
最後まで盛り上がったアンコールも終盤、1曲だけバラードをやった。
最大限に盛り上がっている所でバラード!?
と思ったが、おそらくそれは、マックショウにとって特別な曲なのかも知れない。
「TEMMYE」・・・
Bye Bye Temmye Bye I don't wanna say Good Bye・・・
社長の死を惜しむ、別れの歌・・・・
僕は勝手にそう理解し、心の中で手を合わせた。
初めてピンクドラゴンに行った衝撃から30年以上が過ぎた今も、
いつもビルを見上げていたあの人が、今でも僕と僕の家族を守ってくれている。
これからも僕の傍らにはいつも「原宿ゴールドラッシュ」だ・・・。
fin~
そんな特別な夜の模様を(打ち上げだけですが)、
少し写真に撮ってきたので、良かったらどうそ(*^o^*)
メンバーさんと一緒の集合写真
その②に続く。